考えて、選んで、形にして、伝える。
2026年の夏、4人の子どもたちと進めた全5回の記録です。
途中で止めずに、4人全員が最後まで進みました。
どんなきもちを「ぬの」にする? まずは自分に聞くところから。つかう人を想像して、何をつくるか決めて、世界にひとつだけの柄を考えます。
「なんでこれにしたの?」と聞くと、「なんとなく!」と返ってくることもあります。でも最初はそれでいいと思っています。話しているうちに、その子なりの理由が見えてくる。その瞬間が、私は面白いんです。
思いついた絵を、繰り返しても成立する「柄」にしていきます。配色も自分で決めます。ここからはファッションデザイナーと同じ考え方です。
失敗しない方法を選ぶ子がいました。前の私なら「もっと挑戦してみよう」と言っていたかもしれません。でも、その慎重さも、その子の考え方です。だから「こっちの方がいいよ」は言いません。その一言で、子どもの思考が私の思考になってしまうかもしれないから。
考えた柄が、実際の生地になって届きます。細部を決めて型紙をつくり、自分でピンを打って裁断します。
完成まで何度も考え直す子がいました。最初は「なかなか決められないんだな」と思っていました。でも違った。その子は完成を思い描いて、そこまでの道筋を考えていた。「悩んでいる」じゃなくて、「見通している」だったんです。
ミシンを踏みます。次はロックミシン。初めての道具が続きます。難しいファスナー付けに挑戦した子もいました。
初めてのことは、大人でもこわいものです。それでも「こわいけどやってみたい」という気持ちが生まれてくれたとき、私はいちばん嬉しい。信じてくれてありがとう、と思います。
自分の手で仕上げます。そして、なぜこの形にしたのか、誰に着てほしいのかを伝えます。
最初は、一人ずつみんなの前で発表してもらうつもりでした。でも聞いてみたら、子どもたちは全員「発表は嫌」。それでも「伝える」だけはなくしたくなかったので、方法のほうを変えました。
作品とデザインシートをそれぞれの場所に展示して、自由に見て回る形に。作品の横に付箋を置いて、「ここが好き」「なんでここはこうしたの?」を、お手紙みたいに書いて貼っていきます。
そうしたら、4人の作品のまわりが付箋でいっぱいになりました。想定外だったのは、子どもたちが他の子の作品にすごく興味を持ったこと。質問を書き、作った子が答え、そこから話が広がる。一方的な発表ではなく、作品を真ん中にした小さなQ&Aがたくさん生まれました。
「なんでピンクにしたの?」→「持ってないから。」
「なんで山を薄く描いたの?」→「山が無いと寂しい。昔の日本画っぽくした。」
「なんで鳥と亀を描いたの?」→「長生きの象徴(鶴は千年亀は万年)。」
「この服を着てどこに行きたい?」→「日本舞踊のお稽古。」
つくっているときには言葉にしていなかった「なんで?」が、聞かれることで少しずつ言葉になっていきました。伝えるって、自分の考えを一方的に説明することではなくて、自分と誰かの間にやりとりが生まれることなのかもしれません。